• 上瀬留衣 / kamiserui
  • works

  • 私が持っている個人的な感覚のいくつかは、現実世界とはまた別の「どこか」に置かれていると感じる事があります。
    例えば、「私は他者から生まれたくなかった」「勝手に煮物に味が染み込んで欲しくない」「やった覚えのない犯罪の犯人は実は私である」といったものです。
    それは現実世界が主に物理的な事象によって成立しているのに対して、おそらく個人的な感覚は必ずしも物理現象では捉えきれないものだからなのでしょう。
    しかしだからと言って、その個人的な感覚を当人は安易に扱ってもいいという事にはなりません。
    なぜならその感覚は、私の場合、現実世界と帳尻を合わすためにはなくてはならないもので、あくまで当人の自覚のもと付いてまわるものだからです。

    「どこか」に置いていたはずの個人的な感覚は、心理的に自己を拡張できる状況においてしばしば現実世界に持ち込まれます。
    と同時に、現実世界と個人的な感覚が置かれた「どこか」の境界は曖昧になります。
    しかし物理的制約のある現実世界と「どこか」に置くことにした感覚は共存できず、結局もう一度その感覚を「どこか」へと置いてくることになるのです。

    今回、oxymoron(自己矛盾と訳す事ができるでしょうか)を展覧会のタイトルとし、上記のごとく2つの世界を1つにし、そこにいようとしては失敗する行為を、一つのインスタレーション作品として存在させようと思います。

     

    /////紹介文

    上瀬留衣は2010年に大阪芸術大学を卒業後、従来の造形作品の概念を超えて、自身の身体を展示の一要素として期間中ずっと登場させ続けたり、会場が不穏かつ不条理な構造物によって埋め尽くされるようなインスタレーション作品を精力的に発表してきました。上瀬の活動は、自己の精神を分析し周囲との不協和音を敢えて現代美術作品として社会の中で顕在化させ、結果美術表現の可能性を更に拡大させようとする私的な挑戦と捉える事ができるかもしれません。

    今回の個展においては、作家が欲する「意味の通らないある状況」を、自己矛盾をキーワードにギャラリー空間にまるごと設置しようとします。この機に是非、上瀬留衣による得体の知れない世界をご高覧下さい。(文 : Gallery OUT of PLACE 野村ヨシノリ)

     

     

     

     

  • 私は常に一定の速度で進み続ける時間の中に存在しています。
    そして私は自分の存在を、こういった一定の速度で進み続ける時間(=世界)の中で行われる静止画の連続であると感じています。この感覚は常に私の中にありますが、顕著に表れるのはドアを出入りするときです。

    ドアノブをひねりドアを押し/引き、身体を傾け片方の足を踏み入れるこの行為は、今いる空間/地点からドアを隔てた別の空間/地点へ移動することと言えます。日常生活の中でこの動作は、ほとんどの場合無意識的に行われています。

    しかしこのとき私の頭の中ではドアを出入りする私が様々な視点からの静止画の連続で再生されています。そしてこの私の意識は私の身体がドアを開けて出入りする動作を終えても、まだその行為を繰り返しています。私の身体がドアを隔てた次の空間/地点に、私の意識は完了した過去の行為の中に存在しているのです。

    こうして私の身体だけが私の意識を置き去りにして、世界と共に勝手に進んでいるのです。

     

     

     

  • まったくでたらめな嘘よりも、その嘘の中に何か現実/事実とリンクするものがあるほうが嘘をつきやすく、またより人を騙すことができるでしょう。
    この作品は家族の住む家=home をテーマに「私の望むありもしなかった過去」と「私の記憶の中の過去」という2種類の過去の破片を1つの空間に存在させたものです。
    そして、この決して両立することのない2つの過去で作り上げた家によって、私のついた嘘が私にバレてしまうことでしょう。

     

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    大きな赤い階段の裏側に、背もたれが豪華な装飾・電飾・コラージュされた傾いた大きな椅子が食い込んでいる。

    この大きな椅子の下にカミセルイ(作者本人)がまた別の椅子に座り、ギャラリー開廊時間(7時間連続、最終日のみ5時間)中、静止した状態で6日間展示。

    翌週はカミセルイを抜いた状態で、着用していた服を座っていた椅子に置き展示。

     

     

     

     

     

  • 電子音響音楽・アクースモニウムコンサート内での展示。
    ミュージックコンクレートにおけるブリコラージュ/アッサンブラージュ的手法と、アクースモニウムにおける音響作品の空間としての把握”という側面に関連した作品。

    ※アクースモニウム…複数(通常16個以上)のスピーカーによる多次元立体音響装置

     

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    背もたれが豪華な装飾・電飾・コラージュされた大きな椅子の下にカミセルイ(作者本人)が、これを両脚で抱え込むようにまた別の椅子に座り、この企画中(演奏・休憩時間含む)静止した状態でいる。

     

     

     

  • 私が15歳まで育った家は私の祖父が建てたもので、食卓から階段横の壁に至るまで、ほとんど全ての壁面に硝子戸や窓、ドアがありました。特に庭にある祖父の離れには各面に大きな硝子戸や窓があり、風呂場も硝子張りでした。また母屋と別の離れを結ぶ橋が、集落の人々の行き交う細い路地の上に架かっており、屋内の様子や日々の生活が家族からも外部の人からも見える構造でした。

    こういった家族の住む家=homeの構造は、個人/家族感の形成に非常に強く作用するものと考えています。その作用はその家を離れても、個人の中に過去・現在として死ぬまで存在するでしょう。
    今回の作品は平屋建て一軒家の構造の中に、私の「ありもしなかった/現在の私が望んでいる 過去」と「通り過ぎた記憶の中の過去」が1つの状況として、私を含めたこの世に提示されるものです。

    この決して両立することのない2つの過去は、なんらかの共通項を持ちながら私の中で互いに混ざり合って存在しています。例えば「私は他者(母親)から生まれたくなかった」というように。これらは現実世界ではありえないことですが、私の中では感覚的に成立しています。
    それらが作品として現実世界に無意識的に提示され、その中に身を置くことで、2つの過去の中で生きる私のしくじりが何処からかはっきりと私にバレてしまうことでしょう。

     

     

     

  • 総合ディレクター:谷 悟(大阪芸術大学 芸術計画学科 准教授)
    キュレーター:山中 俊広(インディペンデント・キュレーター)

     

    協賛:南海電気鉄道株式会社
    協力:Gallery OUT of PLACE、Yoshiaki Inoue Gallery、GALLERY wks.
    会場協力:なんばパークス
    主催:大阪芸術大学グループ  主管:大阪芸術大学 芸術計画学科

    撮影:長谷川朋也

     

     

     

     

  • 私は、私と世界(私以外のすべての事物)を繋げるためにあがいている。
    私の作品は私と世界とを繋ぐための装置である。

     

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    赤く着色した水を張った円形プール(布で装飾)の中に、ウェディングドレスを着たカミセルイ(作者本人)が瞼を模した白いオブジェを頭に乗せ、静止した状態で入っている。

    ギャラリー開廊時間(7時間連続、最終日のみ5時間)を6日間展示。

     

     

    撮影:笹倉洋平

     

     

     

     

     

  • cv

    1987年生まれ

    大阪芸術大学芸術学部芸術計画学科 卒業

    私と私以外の物の関係について、平面(フォトコラージュ・ドローイング)、立体/オブジェ、自らの身体などを組み合わせたインスタレーションを制作しています。
     

    個展
    2016 『oxymoron -一昨日見に来てください-』 GALLERY OUT of PLACE/奈良
    2014 『in a home』 GALLERY wks./大阪
    2013 『sweet home』 奈良・町家の芸術祭HANARART2013 もあ/奈良
    2012 『提案』 GALLERY wks./大阪

    グループ展他
    2016  ART OSAKA 大阪

    2015 『カミセルイはすき焼きが好きか?』 箕面の森アートウォーク/大阪

    2014 『世界は勝手に進んでいる』 奈良・町家の芸術祭はならぁと2014 ぷらす/奈良
        『PRISM2014』 Contemporary Art Gallery Zone/大阪
         『Japan Electroacoustic Music Concert』 国立国際美術館/大阪
    2013 『ボーダーレスのゆくえ』 なんばパークスアートプログラムvol.9/大阪
       『最新ゆとりスタイル』 ギャラリー流流/大阪

     

     

     

     

     

     

     

     

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